ロボットの黄金時代

2017年7月17日 スイス、チューリッヒ発

2016年3月、AIの「アルファ碁」が、韓国のプロ棋士、李世乭(李セドル)九段を四勝一敗で破った。これは、チェスよりもはるかに複雑で、他のどのゲームより高いレベルの直感を必要とする碁の2500年の歴史のなかで、世界にAIの力を見せつける歴史的な一戦となった。

ロボティクスはニュージャージーで初の産業用ロボットプロトタイプが開発された1961年以来、長い歴史がある。1974年に、ABBのビョーン・ウェイクブロードとそのチームが生み出した世界初の商業用のマイクロプロセッサ制御によるロボットIRB 6が、現在の産業用ロボットの礎となっている。

(写真) 世界で最初の電動ロボットを開発したチームを率いたビョーン・ウェイクブロードと初のIRB 6

それ以来、ロボティクスは飛躍的な進化を遂げ、ロボットは、自動車製造からロジスティクスまで全ての産業で見られるようになった。エコノミストによると、1993年から2007年までの期間で、ロボットは労働生産性を年0.36パーセント高めた。これは、1850年から1910年の間に蒸気エンジンが生産の機械化において、0.34パーセント生産性を向上させたよりも高い数字だ。

現在、機械学習の飛躍的な進化が、ロボティクスのフィールドで革命を起こしている。PwCの研究によると、2030年までに、機械学習が世界経済にもたらす恩恵は、15.7兆ドルにのぼると言われている。これは、世界で最も急速に成長する経済国である中国とインドの生産高を足した値を上回る。

機械学習による恩恵は、主にプロセスの自動化への柔軟性と熟練した労働力の向上によるものである。消費者がより自分にあった、質の高い製品を買い求めることで、消費は増大する。中国のような国では、これにより、製造による大幅なGDPの増加が促進される。アクセンチュアのレポートによると、1.6パーセントもの成長が見込まれている。

産業用ロボットとAIの組み合わせにより、ロボットのネットワーク化が加速される。これは膨大な事業機会をもたらす。遠隔監視センターに繋がれている産業用ロボットでは、現時点でわずか2パーセントだ。

その能力が高まるにつれ、ロボットはより多くの産業で活用できるようになる。国際ロボット連盟のレポートによると、2015年には、ロボットの販売は15パーセントの伸びを示し、単年としては、圧倒的な過去最多を記録した。

ABIリサーチの調べでは、米国でのロボット販売は今後10年足らずで300パーセント近く激増する。世界の産業用ロボットの出荷台数は、最大の市場である中国が牽引し、2025年には3倍になると言われている。

ABBは、1974年に最初のロボットを発売以来、30万台以上のロボットを出荷してきた。 そして、ロボットの未来に対する備えもできている。ロボティクス事業では、人員確保を加速しており、平均で1日3人を採用している。

インターネットに接続されたセンサ、クラウドコンピューティングを活用し、膨大なデータを収集、分析、そしてその結果を、的確なアクションに転換することで、世界中の工場はよりスマートになってきている。このため、無駄を取り除き、以前は理論値と考えられていたレベルの効率性をもって工場が稼働するようになった。

現代の産業用ロボットシステムは、プログラミングや最適化のためにシャットダウンする必要がない。 エンジニアは生産ラインで稼働するロボットと同じソフトウェア上で、これらの作業を行うためにシミュレーションとオフラインプログラミングツールを使う。例えば、プログラマーは、装置が実際の工場の現場でどのように動作するのか、そして損失が大きくなる衝突を未然に防ぐようにシミュレーションを活用することができる。

最先端のロボットは、ほとんどの人間がロボットに代替してほしいと願う重労働や危険な作業により多く使われていくようになるであろう。 これは、企業にとってもプラスである。何故なら、例えば製造業においては、投資利益が1年以内で回収でき、コスト効率が極めて高いからだ。

YuMi

機械学習を用いるロボットは、どんどん人間の作業を補助するようになっていく。世界初の真の協働型ロボットのひとつが、ABB のYuMiだが、これは、組立てラインで人と隣り合って作業ができるロボットというコンセプトで設計されている。人がYuMiの動線上にいる場合、YuMiのセンサが感知する。これは、前世代のロボットではできなかったことである。

ロボットは、人がやりたくない仕事を請負い、新たな仕事を生み出す。韓国、日本そしてドイツは、1万人の労働者に対するロボットの設置台数が世界トップ3の国々である。 これらの国は世界的に見ても失業率が最も低い国々であるにも関わらず、である。マッキンゼーグローバルインスティテュートによると、将来においても90パーセントの仕事は全自動化することはできない。そのかわり、人とロボットがどんどん一緒に働くようになる。機械学習とITにより、新しいビジネスモデルが生まれ、新しい事業機会が拓かれるだろう。

事業においては、労働者の職業訓練に投資が必要で、労働者はそれによってより賃金や満足度の高い、より高い職務レベルへと昇格することができる。 このような労働市場の大きな変化には前例がある。自動刈入れ器機の出現は多くの農業従事者の職を奪ったが、実際、職を失った労働者は組み立てライン、或いは新しい経済分野で職を見つけた。

ロボットができないことは沢山ある。例えば、ロボットは人間のように変化に対応することはできない。ロボットにはビジョンシステムとセンサが備わっているが、ロボットが置かれる環境の状況を理解することはできない。すなわち、プログラムされていないタスクは実行できない。

しかし、機械学習が進化するにつれ、ロボットは飛躍的に高機能になってきた。蓄積された知識と経験を駆使して環境変化に反応し、変化するタスクに適応することができるようになる日はさほど遠くない. ABBのように、毎年15億ドルを研究開発に投資し、70もの大学とパートナーシップを展開している企業は、広範かつ徹底したデジタルソリューションを構築するのによいポジションに位置している。これらのソリューションは、センサから取り込むデータをフルに活用し、瞬時に制御に関する決定を行える。

これらの革命的な変化は圧倒的に有益なものである。第四次産業革命は、多くの産業における生産性の向上、私たちの働き方の変革と改善を促進する可能性を秘めるロボティクスを、黄金時代へといざなっている。 職能を持つ人々が、スマートなロボットと協働するーそれが、よりよい世界の未来を実現するのだ。

関連情報

· ABB Robotics

· Video: Training for the fourth industrial revolution

· Video: Smart factories and ABB Ability

· Video: ABB Ability for food & beverage

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